「Webサイトの速度は本当に早ければ良いのか?」のコンテキストを考える

「Webサイトの速度は本当に早ければ良いのか?」を読んで、速くない方がいい面をいろいろと考えたのですが、そもそものコンテキストをいろいろ考えてみた記事です。
記事の概要
要約すると「Webサイトの速度は速い方がいいけど、それが信頼性を失う場面ってあるんじゃない?」という内容です。記事内では、
入力フォームでデータを送信する等の、自分の行動とそれに対する結果を伴うような双方向のやり取りについては、正しい処理が行われたという安心感を得られない場合、不信感を抱きます。
という表現がされており、例えばクレジットカード決済が一瞬だったり、個人資産に関する処理が一瞬だったら不安にならない?ということが書かれております。
私自身、はじめてPHPを覚えたばかりの時「私のPHPの処理は一瞬だけど、楽天や銀行はすごく時間をかけてる。きっとすごいセキュリティチェックが走ってるんだ!」と思ったことを覚えてます。一瞬、sleepで処理を遅らせて私もすごいセキュリティチェックをしたように見せかけようという誘惑にかられたこともあったりなかったり。
信頼は待ち時間によって生まれるもの?
ですが、そもそも信頼って待ち時間によって生まれるものではありません。もう少しいうと、Amazonやメルカリでの処理が一瞬で終わることによって不安が生まれるというのもちょっと予想つかないです。で、これってなんでそう思ったのかなというと、以下のコンテキストがあるのではないでしょうか。
- Webが生まれたばかりの時、CSVでのシステムが結構あった。排他ロックかかりまくりで処理に時間がかかって当たり前。
- そもそも同期処理しかできない言語が主流。非同期処理しないならそりゃ処理に時間かかる。
- あとネット回線自体も細かった
- 「一瞬で結果返ってくるとかありえない」という固定概念
- 今でも銀行や大手でいちいち待たせるサイトあるけど、大体は一般的に「セキュリティがしっかりしてるはず」と思われてる
時代背景、年齢、いつからネットしてどういうWebサイトを普段さわってるかなどの属性が完全に当てはまったら、ここから「安心感」の定義がスタートされることもありうるかもしれません。
待ち時間をつくったら解決するの?
「処理が速すぎたら不安になるかもしれない」「属性が完全に当てはまったら存在しうるかもしれない」と仮説を重ねた上での話で恐縮ですが、そういう人たちがいると仮定して、待ち時間をつくったら解決するのでしょうか。
これは2つの意味で疑問視せざるえません。
- どれだけ待ったら安心しうるかデータがない
- その属性以外にとってはただの待ち時間(一般的に待ち時間が長いことは不快感を生みます)
なので、待ち時間をつくることは解決するどころか、その属性以外のユーザに対しての問題を引き起こします。
いくつもの改善策はある
もともとのスタートラインは「待ち時間の有無」ではなく、処理が正常に行われているかの不安視です。ということは、処理が正常に完了したという安心を与えるインターフェイス設計をしたらみんな(という表現はあまりよくないですが「大多数」)が幸せになる施策はあるのではないでしょうか。そういうのは「デザイニング・インターフェース」はちょっと古いか。インターフェイス論で様々な議論が行われているので詳細はそちらに譲るとしても
- 問い合わせフォームだったら、ユーザにメールで問い合わせが完了した旨送る(今では当たり前になりましたね)
- 銀行やネットショッピングだと操作履歴をユーザのわかりやすいところに表示する
- 一瞬で処理が完了しない内容だったら非同期的に処理が完了したことを通知する
- セキュリティ的な問題だったら、セキュリティへの取り組みを提示する(ユーザが不安になった時にアクセスできるように)
などありますよね。不安というのは認知上の問題なので、どう認知させるかを考えると面白いテーマかと思います。
速いことはいいことだ
スタートラインが「 Webサイトの速度は本当に早ければ良いのか?」ですので、私の認識をいっておくと「速ければ速いほどいい」です。
Web制作者は一度、自分のつくったWebサイトを、Wifiのつながっていない環境下で、移動など「何かをしながら」モバイルでみてみてください。画像の表示のチラツキ、遷移時の再読込、電車が地下鉄に入った時にリロードしたらオフラインになる不快感など、PCや快適な環境下で観察しながらWebサイトをみた時と全く異なる体験ができると思います。
「開発者の環境下ではユーザは利用しない」という当たり前の原則に立ってみると、Webサイトが速いことの意味を再認識できるかと思います。速いどころか「待ち時間はゼロであるべきだ」とService Workerによるオフラインキャッシュの技術まで生まれました。
優先度をどこにおくかはビジネスによって考えるべきですが、「これぐらいは遅くてもいい」というのもあくまで先入観だと割り切って一度「速さ」に挑戦してもらえればと思います。
それでは、また。